個人売買はできる?できない?
中古マンションを含む中古住宅や土地等の個人間売買について、お話させていただきますが、先日の私の経験談をもとにお話しを進めていきたいと思います。
私のお客様は、現在住んでいる一戸建てを売却し、新たに別の場所で一戸建てを購入しようと考えておられました。
そのお客様は、購入したいと思う物件を割りに早い段階で見つけたので、その物件を購入するために、現在のご自宅を売却したいと考えていました。
しかし、自宅には住宅ローンが残っていたので、その自宅の売却ができないと、新たな購入先の物件で住宅ローンが組めないのです。
そのため、もしも自宅の売却ができない場合は、購入先の売買契約を白紙解除する、いわゆる「買換特約(かいかえとくやく)」をつけての売買契約をしました。
購入先の物件は、中古物件であり、売主は個人、年配の女性(おばあさん)でした。
売主には、買換特約をご納得いただけたので、スムーズに売買契約をすることができました。
そんな中、私のお客様が、たまたま自宅の家の玄関から表に出たときに、お隣さんとばったりと出会い、今まで会話もしたことがないお隣さんが、話しかけてきたのです。

私のお客様はまさに「渡りに船」、もしも買っていただけるならば、これほどありがたいことはありません。
しかしお隣さんは、次のように言ってきたのです。

私はあとでその話を聞いたときに、購入先の売買契約のが自宅が売れなかったときに買換特約によって白紙解除になることを心配していましたので、もしもお客様の自宅をお隣さんが買っていただけるならば、とてもありがたい話でした。
ちょうどお客様のご自宅にお邪魔しているときに、お隣さんが家に来られることになり、私のお客様は不安なので、私にその場にいてくださいと頼まれました。
私はお客様が不利にならないように、立ち会うことにしました。
要するに、私のお客様は、自宅をお隣さんに買っていただくために、お隣さんと個人売買での価格や条件の折衝をするのですが、私のお客様が不利益を被らないように、仕事は抜きで売却のお手伝いをさせていただくことにしたのです。
そして・・・ お隣さんは、私のお客様の家に上がってこられました。
お隣さんは世間話もほとんどすることもなく唐突に、

と聞いてきました。
私のお客様は、すごく人のいい方で、そういう不躾なお隣さんに対しても丁重に対応されました。

と聞き返しましたら、お隣さんは

と持参した電卓をぽんぽんとたたき、約20坪の土地だったので、1600万円を提示してきたのです。
なんか電気屋の営業マンのような感じでした。(電気屋さんすみません)
私のお客様は「1600万円ですか?!」とびっくりしていました。
そして

と問い直すと、お隣さんは

とか何とかいいながら、90万円を提示してきました。中間を取ってとか、なんかそんなことをおっしゃってたように思います。
結局、価格は1800万円でまとまりました。
私のお客様が少々譲った感じです。
そして、このあとが個人売買(個人間売買)問題の始まりだったのです。
個人売買問題の始まり
価格がまとまりましたら、通常は、お互いに合意した内容、および約束事をを間違いのないよう書面化、売買契約書を作成します。
また、売買に仲介業者が入る場合は、売買の対象になる物件を調査し、買主に対して重要事項説明書を作成、説明がされるのです。
今回のケースでも、まとまった内容を書面化して、売買契約書を作成することになりました。
ちなみに、今回のケースの売買契約でのポイントは、
- 価格
- 引渡し時期
- 代金の支払方法
- 瑕疵担保責任
主にこの4つでした。
上記の4つは、個人間で売買する場合も、仲介業者が入って売買契約をする場合でも重要なポイントになります。
細かく言えばもっとありますが、このページでは、この4つに絞ってご説明させていただきます。
<1>価格
価格については双方で合意しました。
合意した価格がお互いの認識が間違いないのか、悪質な人であれば、後で「違う」と言ってくるかもしれません。
今回は1800万円でまとまりましたので、1800万円の金額をきちんと明記します。
<2>引渡し時期
私のお客様は、購入先の物件の引渡しは2ヶ月先でしたので、本来ならばその引越し時期に合わせてもらえるように交渉をします。
ところがお隣さんは、「遅すぎる」と突っぱねてきたのです。
売却しないと次の購入先の物件が買えない私のお客様は、お隣さんの言い張る1ヵ月後で泣く泣く納得されました。
つまり、仮住まいを覚悟されたのです。
<3>代金の支払方法
通例の売買契約ならば、売買契約を証するため、および売買契約の約束事が守られない場合のための保全として、「手付金」を買主から売主に支払います。
ところが、お隣さんは「面倒だから」と言い張り、手付金なしの一括支払い、同時引渡しを押し通してきたのです。
私のお客様は、「ちゃんと買っていただけるならばそれでもいいです」とやむなく納得されました。
<4>瑕疵担保責任
瑕疵担保責任とは、買主が物件の引渡しを受けて、入居してから隠れた不具合が見つかったときに、売主に責任を負ってもらうものです。
一般的な個人間の売買であれば、その期間を引渡しから3ヶ月に設定します。(民法ではこういう取り決めではありません)
しかし、お隣さんは1年を希望し、それが飲めないなら契約しないと、一方的に強く出てきたのです。
結局、9ヶ月でお互い合意しました。
上記を見ていただいてもわかりますように、一方的に買主にとって有利な契約となっています。
いずれにせよ、私は私のお客様にきちんと書面化するように申し上げました。
そして、無償サービスで契約書を作成いたしました。
また、その契約の立会人として、司法書士に入ってもらうようにお願いをしました。
私のお客様は私の作成した契約書を持って司法書士事務所に行きましたが、結局お隣さんは私の作成した契約書には目もくれず、かなり強引に別の様式を持参し、売買契約を交わしたのです。
今回の契約で一方的に売主に不利なのは、
- 手付金がないこと(違約金もなしになっていた)
- 瑕疵担保責任が9ヶ月
でした。
こんな内容だとはっきり言って、単に物件を押さえただけ(ほかの人に売却されないようにしただけ)で、売主にとっては、リスクのある条件ばかりです。
その売買契約が有効な間は、ほかに良い条件で買ってくれる買主が来ても売却することはできませんし、もしもお隣さんが「やっぱり買うのやめます」と言われても、お隣さんは何のペナルティもないのです。

お隣さんはおそらくそんな考えを持っていたように思います。
買う買わないの交渉のときもものすごくエラそうでしたし、高圧的でした。
私のお客様は今の家が売れなければ、新しい家に住むことができない、そういう弱い部分があったことを知っていたのかどうかわかりませんが、本当にお隣さんはエラそうでした。
そして・・・
契約後3週間経って、お隣さんは「やっぱり購入しない」と言ってきたのです。
つまり「売買契約の解除」です。
しかし、通常であれば「手付金没収」などでペナルティを課せますが、まったくノーペナルティ。買主の気持ちひとつで、いったん買うと言った約束も簡単に破られてしまったのです。