資金面から土地活用の手法をチェック
1:土地の売却
また、人によっては不動産での相続よりも現金の方が良いと言う人もいます。
そのため、土地活用の一つの手法として、土地の単純売却も考えられます。
土地売却の最大の欠点は、譲渡所得税が課税されることです。
相続した土地を売却するときの税率は、5年以上の長期所有の場合20.315%(所得税15.315%、住民税5%)とかなり高くなっています。
2:等価交換事業
等価交換といっても、土地オーナーが土地の一部を譲渡して、その譲渡代金で建物を購入するものであるため、実質は買換えとして扱われます。
メリット
- 三大都市圏などでは、買換え特例が適用され課税が繰り延べされる
- 土地オーナーは建設資金を出さずに、建物を取得できる
デメリット
- デベロッパー側は、土地オーナーの意向で建物のコンセプト・プランが制約されることを嫌う場合がある
- 出資する土地の算定価格で交渉が難航することも多くある
相性の良いデベロッパーを見つける事が重要になるでしょう。
3:自己資金と借入金での事業
土地オーナーの場合は、既に土地を所有しているので、建設資金のみの調達で事業が開始でき、収支が成り立ちやすい環境があります。
しかし、あくまでも【経営】となりますので、しっかり計画して取り組まないと、収支が合いやすい環境でも、失敗する可能性も出てきます。
目的からみた土地活用の手法
リターンから考えると、土地活用の目的には大きく分けて、以下の3つが考えられます。
- 現金収入を得る
- 賃貸収入を得る
- 相続をする・しやすくする
それぞれを詳しく見ていくと以下のようになるでしょう。
現金収入を得る
土地活用の最も簡単な手法です。
売却して、現金に変えてしまう事で、株式や、証券などの別の金融資産に投資する事も可能です。また、相続税の支払いや、災害時の急な対応時には現金が必要な場合も多分にあります。
この点においては、先に挙げたように、絶好のタイミングで土地を売却する必要があります。
賃貸収入を得る
賃貸建物を建設すると20年、30年、50年という長い期間にわたってその賃貸資産と関わって行くことになります。
新築から5年くらいは満室経営ができたとしても、経年劣化による空室率上昇や、家賃の値下げ圧力がかかり始めます。また、大規模な修繕やリフォームも必要になってくるタイミングもあるでしょう。
相続をする・しやすくする
いろんな節税方法
土地によっては数千万円にものぼる相続税を遺すことになるため、土地オーナーは生前に有効な対策を図っておくことが大切です。
最も単純な節税
しかし、節税を目的に安易に巨額な借金を背負い込むと、最悪の場合、全ての財産を処分しても借金を返済しきれないこともあり得ます。賃貸物件にした場合、家屋と土地の相続税は大きく下がる事から、安易にアパート経営を始める方もいますが、しっかりと綿密な計画が必要です。
とはいえ多額の借金は不安な場合
評価額5億円の土地だけを土地オーナーの配偶者と、その子供2人で相続をする場合、子供2人で合計約4,500万円の相続税が課税されることになります(配偶者には相続税がかかりません)。評価額5億円の土地なら、金融機関から返済期間10年で約4,500万円くらいの融資を受けることは可能なので、銀行融資を受けた後、相続税4,500万円を一括で納めましょう。
その後、相続した土地を、駐車場事業者に賃貸することで、賃料から相続税分を回収していく事が可能になります。
売却して現金化する方法
この場合は無借金で賃貸経営ができることになります。
遺産を分割をすると、メリットいっぱい
そういった場合、等価交換方式でマンションを建設し、配偶者、子供それぞれがマンションの住戸を相続する方法がおすすめです。もちろん、自分たちが住んでもいいですし、賃貸に出して、家賃収入を得ることもできます。
このように、相続のときには円満に分割できるよう、あらかじめ準備をしておくことも大切です。
土地の分類を3つにわけて、特性を把握しよう
土地は当然、動かすことができませんし、地域の印象や特徴を変えることも難しいです。
このため、その土地の持っているイメージや特徴や特性に合わせた土地活用計画を導き出すのが必要になります。
立地の特性を大きく分類すると、【駅前立地】、【住宅地】、【ロードサイド】に分類できます。
3つの特性をそれぞれ詳しくみていきましょう。
駅前立地の土地活用
このような立地は、自然と人が集まってくるエリアです。
駅前広場が近く、駅改札口から見える立地、駅前に広がる商業地域、駅前から続く商店街などがこの立地に属します。
例えば、グルメ・飲食店の商業施設が並ぶ建築物を土地活用で思い描いた場合は、テナント候補は飲食店になります。
だけど、一口に飲食店と言ってもフランス料理店やイタリア料理店、中華料理店などさまざまなタイプがあります。
どんな料理の店にお客さんが並んでいるのか、お客さんの年齢層は高いのか低いのか、サラリーマンが多いのか、客単価を各店舗のメニューから想像したりと、しっかりと調査します。
居酒屋でも、多店舗展開しているチェーンストアが競い合っていたり、安い立ち飲み系の気楽な店が賑わっているのか、それぞれの地域の特性を掴む事が重要です。
飲食店は最も経営が難しい業態といわれていますが、その成功には、土地の力が大きく影響します。
駅前の商業ゾーン等は、多くの人々が集まり、その人々がもたらす高い稼働率が飲食店の経営を成功に導いてくれる事でしょう。
またオフィスビルの場合でも同様に、テナントを借りている企業の業種や空室状況を見ることです。
消費者金融関係が多く入っている、大手企業の支店や出張所、病院や診療所など、オフィスビルに入居しているテナントの特徴を理解することも必要です。
また、土地活用を計画している場所の駅だけでなく、ターミナル駅、急行・快速の停車駅であったり、同じように調査をして土地の特性を比較してみましょう。
土地活用を検討している土地の最寄駅の特徴や強み、最寄り駅以外の駅と比較した上での良い点・悪い点等をピックアップして比較すると特性が見えてきます。
住宅地
住宅地は、最寄り駅から徒歩圏で周りに住宅が立ち並んでいる広範囲はエリアが対象となります。
住宅地における一般的な土地活用は、アパートマンション経営の賃貸事業になります。
賃貸住宅の建設会社は多く、空室保証や、一括借り上げのメニューも豊富です。
簡単に家賃収入が得られるイメージがありますが、最近は少子高齢化でワンルームマンション等を借りる若者が減少している地域も多いため、空室に悩まされているマンションオーナーも多くなっているのが現実です。
このため、建設会社の空室保証や、一括借り上げメニューを過信することなく、自身で工夫をしていく経営でなければ、満室経営は実現できないと考えておく方が賢明でしょう。
調査範囲においては、駅前の土地と同様に、まずは最寄り駅の賑わい調査から始めるのがお勧めです。
対象の土地まで駅から歩いてみて、周囲の環境をチェックします。
その道ながらに、どんなスーパーマーケットがあるか。コンビニエンスストアがあるか。銀行や飲食店の数を調査し、
利便性を把握しましょう。
夜道の暗さや、夜でも人通りはあるのか、道路の雰囲気が明るいかなどを調べるべきです。
大きな公園や図書館や大学や専門学校などの、存在は、googlemapsでも調べられるので、印刷した航空地図を片手に歩くのもおすすめです。
小さな家や古いアパートが密集している地域は、グレードが下がる傾向にある反面、50坪から100坪程度の土地に住宅地が並ぶエリアは、落ち着きがあって人気になっている場合が多いです。
街全体の活気がある点が重要なため、若い女性が安心して住めるか、若者が集まるかといった視点で見る事が重要です。
そういった街の雰囲気から、自身の土地に建設するアパートのコンセプトが決まってくることになります。
ロードサイドにある土地
ただし、店舗は大型になる傾向にある点と、建物だけではなく駐車場などの建設も必要になり、資金が多く必要な場合もあります。そんな中で様々な資金調達方法が考えられますが、以下に挙げておきましたので参考にしてみてください。
駐車場とその建設資金の調達方法について
ロードサイド店舗には駐車場が不可欠で、建物も大型になることから有利な資金調達が欠かせません。
資金調達ケース1:土地オーナーの自己資金
土地オーナーが自己資金や金融機関からの融資を受けて建物や施設を建設する方法です。
担保力のある土地を保有しているなど、土地オーナーの資金調達力が高いことが前提になります。
資金調達ケース2:オーダーリース方式
テナントから建設協力金(敷金、保証金)の差し入れを受けて、その資金で建設する方法もあります。
土地オーナーはこの建設協力金でテナントのニーズにあった建物や施設を建設します。
賃借期間は15~20年程度のものが多く、この賃貸期間中に建設資金を分割で返済していきます。
全ての建設資金を建設協力金でまかなう場合もありますが、実際には土地オーナーも自己資金を一部調達して建設資金に充てているケースがほとんどです。
テナントが建設資金のほとんどを負担して、テナントのニーズにあった建物や施設を建設する方式なので「オーダーリース方式」とも言われます。
ただし、オーダーリース方式の場合、テナントの意向に沿った設計のために汎用性が低いので、次のテナントが見つからずに苦労するリスクがあります。
しかも、テナントの中途解約や撤退等のリスクヘの対応も必要です。
契約上は、「中途解約不可」、「中途解約時の後継テナントの選定義務」、「中途解約時の建設協力金没収」などの条件を賃貸借契約に盛り込むこむ必要がある点にも注意が必要でしょう。
資金調達ケース3:事業用の定期借地件を設定して賃貸
土地オーナーの負担とリスクを最小限にしたものとしては、土地に事業用の定期借地権を設定して賃貸し、テナントが建物や施設を建設する方式があります。
借地権の設定期間は10~ 50年です。土地オーナーは建設費を負担しないので、土地活用のリスクは、地代の下落、中途解約程度に限定されるメリットがあります。
さらに、「賃貸期間中は地代の値下げ不可」、「中途解約時の違約金」などを契約内容に盛り込めば、よりリスクが軽減されます。
また、原則として、契約満了時には更地での返却となるので、土地オーナーにはかなり有利な契約となります。