土地活用のスケジュール管理の重要性
土地活用ににおける様々なパートナーのスケジュール調整・進捗管理が、とても重要になります。
当然、土地活用オーナーだけでは、範疇を超えてしまいますので、土地活用コンサルティング会社などの専門家が中心に行いますが、土地活用オーナ―自身も、この重要性について認識しておくべきでしょう。
「スケジュールは短く、予算は低く」というった安易な計画では、当然どこかに無理が生じるものです。
計画段階で、スケジュール、予算ともに、ある程度余裕をもった内容を詰めておくべきでしょう。
長めのスケジュール、多めの予算に対して、結果的に、予定以上にスムーズに事が運び、予算も抑えられている状態が理想となります。
土地活用方法の提案書のスケジュール欄はここをチェック
土地活用オーナー自身で用意した計画書でもそうですが、実際は、コンサルティング会社や、具体的に事業内容が決まっている場合は、ハウスメーカー等の事業者側が土地活用オーナーの意向を反映して提案書を作成し、持参してくることがほとんどでしょう。
その中で、どの企業が、最もオーナーの意向を反映しているかを比較検討するわけですが、今回は、中でも、スケジュールに注目して、「ここをチェック」したほうがいいよという点をお伝えします。
建設期間
概算の建設期間・工期は予測できます。
建物の構造や、敷地形状・ロケーションに応じて、概算の工期を算出します。
鉄筋コンクリートの場合の目安は、
- 建設期間:階層+3か月
- 全工事期間:階層+5か月
(ボーリング調査と杭打ち工事期間に1か月。検査と予備エ事期間として1か月。)
となり、例えば、
5階建てなら、8か月が建設期間で10カ月が全工事期間
といった感じです。
ここをチェック
- 建設期間のスケジュール算出の中に、お盆休みや、年末年始などが考慮されているか?
完成まで3カ月の工数とした場合、単純に、6月1日着手して、8月31日完了ではないということです。
建設業界は、人工の世界なので、このように工数だけの算出の場合もあります。
このため、その工数をカレンダーに落としてみて、実際に、完成はいつになるかを確認しましょう。
設計と建築確認
設計事務所では意匠、構造、設備という区分で設計を進めていきます。
竣工したら4日以内に「完了検査申請書」を提出し、「検査済証」を受け取ります。
建物の高さや規模によっては近隣住民のために「建築計画のお知らせ標識(看板)」を建築確認申請の前に現地に掲示しなければなりません。
権利調整
立ち退きや近隣対策、共有名義の問題などを解決したうえで建築する必要がある場合は、利害関係者がいることなので、スケジュールが予定通りにいかないことがあります。
こういった事情のある場合のスケジュールはあくまでも【暫定】であることを理解しておきましょう。
立ち退き交渉などは、最も時間を必要とする問題で、数年かかった事例もあります。
こういった問題は、スケジュールを立てる前にある程度、調整が済んでいることが理想ですが、立ち退き交渉は土地オーナー自身あるいは弁護士が行う業務なので、弁護士さんにこまかく相談しながら、スケジュールに反映していくことをおすすめします。
入居者の募集スケジュール
竣工までに全室契約済みを目指し、良いタイミングで募集を開始することが重要です。
ビルなどはテナント誘致の競争が厳しいので竣工後6か月くらいで全フロア契約という状況でも成功とみなされますが、住宅の場合は竣工時には全ての住戸の契約が完了していることを目指すべきです。
オフイスや商業系であれば、建物の図面や仕様が確定した段階で専門の仲介会社に情報を流し、早めにリーシング活動をします。
リーシングとは
賃貸の不動産物件に対してテナント付けを行い、仲介業務を行うことを意味します。
住宅系は建物ができないと入居者がイメージしづらいため、竣工間際になって次々と決まるということがよくあります。
金融機関の融資等
建設会社への支払いなどのタイミングをしっかり確認した上で、金融機関の融資を調整しておくことが大切です。
賃貸経営土地活用のスケジュールを具体的に見ていこう!
この間に、マーケティング調査や建設会社の選定、建築費の調整、プランの比較検討、事業収支計画の作成、金融機関の融資調整、建設工事管理、賃貸管理会社の選定、入居者の募集など、さまざまな調整が必要になります。
もちろん、それぞれのパートナーの間にたつ橋渡し役のコンサルティング会社がしっかりスケジュール管理し、調整してくれます。
ここでは、賃貸アパートでの土地活用のスケジュールサンプルで簡単に説明しましょう。
コンサルティング系業者の選定と業務委託契約締結
1年目 01月~02月 コンサルティング会社の選定から業務委託契約
- 土地活用をコンサルティングしてくれるパートナー選定
- 土地活用コンサルティング業務委託契約締結
- 現地周辺のマーケティング調査と賃貸需要、入居者やテナントのターグット層をどこに絞るかの検証
コンサルティング会社等のファイナンシャルプランナーや、土地活用プランナー資格を持つ方々と面談し、信頼できるパートナーを探しましょう。
設計事務所のスケジュール管理
1年目 03月 設計事務所選定
- 設計事務所を数社選定して、プレゼンテーションの作成依頼
マーケティング調査・ターゲット選定が終わった段階で、設計事務所を数社選定して提案書の作成を依頼します。
4月・5月 提案書・プレゼンテーションの比較 設計事務所の提案を比較検証
- 設計事務所の提案書・プレゼンテーション作成
- 設計事務所の提案書・プレゼンテーション比較検討
設計事務所が作成した提案内容をもとに、コンサルティング会社が賃料査定や事業性を検証します。
06月~08月 設計事務所決定と基本設計開始
- 設計事務所決定、設計業務委託契約締結
- 基本設計(平面図・断面図・立面図)作成
- 建設会社向け見積り用図面作成を依頼
設計事務所の提案書とプレゼン内容を比較検討したうえで、1社を選定。設計業務委託契約を締結します。
ここから、設計事務所は面積・階数等の基本部分の平面図、断面図、立面図(基本設計図)の作成を開始します。
基本設計図と合わせて、建設会社向けの見積り用図面作成も依頼する必要があります。
09月・11月 実施設計の作成開始
- 実施設計作成
- 建物間取り、設備・仕様等の打ち合わせ開始
設計事務所は基本設計完了後、実施設計作成に着手。建設材料の素材、設備機器の選定、詳細寸法計画などを作成します。
間取りや設備機器、仕様について随時打ち合わせを繰り返します。
1年目 11月 建築お知らせ看板設置
- 現地に建築お知らせ看板設置
地方自治体の条例にしたがって建築お知らせ看板を現地に設置し、近隣説明を開始します。
近隣の方への挨拶などは、コンサルティング会社にまかせっきりにするのではなく、オーナー自身も是非動向しましょう。
1年目12月~2年目01月 建築確認申請と確認済証取得
- 実施設計完了後、建築確認申請を提出
- 1~ 2か月で確認済証を取得見込み
実施設計の完了後、すぐに確認申請を特定行政庁の建築主事か指定確認検査機関に行います。
02月~10月 工事監理
- 設計事務所による工事監理と報告書受領
設計事務所が工事監理も併せて行います。
土地活用コンサルティング会社は、設計事務所からの報告をまとめて、土地オーナーに報告します。
11月 検査済証取得
- 工事完了後、検査済証の取得
- 施主による完了検査および手直し工事
12月 建物引渡し
- 手直し工事完了、確認後の建物引渡し
工事が完了すると検査を受けて、検査済証を取得します。
その後、設計事務所、コンサルティング会社、土地オーナー(施主検査)の順で建物の品質や仕上げの状況を検査します。
建設会社のスケジュール管理
1年目 08月 見積り用図面をもとに、建設会社候補の選定
設計事務所に依頼しておいた、見積り用図面と仕様書が出来上がったら、これをもとに建設会社の候補を選定します。
1年目 09月 10月 建設会社に見積もり参加の依頼
- 建設会社に対し見積り作成依頼
工事の規模、工法、これまでの実績から数社を選んで、見積り用図面と仕様書を渡し、見積りを依頼します。
11月 建設会社の見積り金額の比較検討
- 建設会社より、見積金額の提示
- コンサルティング会社による見積書の精査
- 協議、建設会社の決定
複数の建設会社から提出された見積金額と、各種設備の仕様の詳細を、コンサルティング会社がチェック。
その疑間点等を建設会社に確認後、土地オーナーと協議して建設会社を決定します。
1年目 12月~2年目 01月 実施設計をもとに工事金額を決定
- 実施設計に基づく、建設会社よりの本見積書提出
- 工事費明細の確認・精査、金額交渉
- 減額調整(バリューエンジエアリング)
- 最終建設工事費の決定
設計事務所の実施設計をもとに、建設会社が積算し、本見積書を提出します。
それを受けて、コンサルティング会社が、工事金額の値下げ交渉や減額調整を行って、最終工事金額を決定します。
2年目 02月 10月 請負契約締結・着工・竣工
- 建設会社と工事請負契約締結
- 地鎮祭(安全祈願祭)の実施
- 建設工事の着手、工事実施
- 建設工事の竣工
1月に確認済証を取得できれば、2月から工事に着手となります。
建設会社と建築工事請負契約を締結し、地鎮祭(安全祈願祭)を執り行います。
地鎮祭とは
神を祀って工事の無事を祈る儀式です。呼び方は様々で、鎮地祭、土祭り、地祭り、地祝いとも言う地域があります。
費用は施工業者が負担するのが一般的です。
随時、コンサルティング会社より工事の進捗状況を報告してもらいましょう。
11月 検査済証の取得と手直し
- 工事完了後、検査済証の取得
- 施主による完了検査および手直し工事
12月 建物引渡し
- 手直し工事完了後、確認後の建物引渡し
建設会社の社内検査に合格後、指定確認検査機関か建築主事の検査を受けて検査済証を取得します。
設計事務所のスケジュール同様、設計事務所、コンサルティング会社、土地オーナー(施主検査)の順で建物の品質や仕上げの状況を検査します。
賃貸管理会社のスケジュール管理
2年目 08月 賃貸管理会社の候補選定
- 賃貸管理会社の候補選定、プレゼンテーション依頼
賃貸管理会社の候補を選定して、プレゼンテーションを依頼します。
10月 賃貸管理会社の決定
- プレゼンに基づき、賃貸管理会社を決定
- 賃貸管理会社と賃貸管理業務委託契約締結
賃貸管理会社のプレゼンテーションから、建物の管理方法を比較検討します。
専門用語が多いため、コンサルティング会社を通して、各社のプレゼンテーション・提案内容の違いの説明を受けるようにしましょう。
11月・12月 入居者募集開始
- 賃貸管理会社により募集図面作成
- 募集開始、現地案内、入居者審査、賃貸借契約締結
- 賃貸管理会社が、入居者募集の図面を作成します。
竣工に合わせて入居できるように、入居者の募集を開始し、現地案内、入居者審査、賃貸借契約締結などの業務を進めます。
3年目 01月 賃貸管理業務開始
- 入居に伴い、賃貸管理業務開始
- 入居に伴う管理業務の遂行状況チェック
- 賃貸運営状況の把握、賃貸経営状況のチェック
新築建物の場合、入居が始まると思いがけないトラブルが発生することがあります。
賃貸管理会社がこの管理をし、コンサルティング会社に報告します。
金融機関のスケジュール管理
有利な融資の取り付けと、スケジュールに沿った融資が実行されるよう、コンサルティング会社と打合せしましょう。
1年目 03月 金融機関への融資打診
- 事業収支計画書、マーケティング調査資料、設計図面、見積書、登記関係書類などの資料に基づき複数の金融機関との融資打診
オーナーと、コンサルティング会社で作成した事業収支計画書とマーケティング調査資料、設計事務所の基本図面・見積書、土地の登記記録事項証明書などの資料をもとに、複数の金融機関に融資の可能性を検討します。
06月 金融機関の決定
- 融資金額、返済期間、金利、返済方法、保証料などの融資条件を比較検証して金融機関を決定します。
1年目 08月~2年目 12月 金融機関と契約締結
- 金融機関との金銭消費貸借契約の締結
- 着手金、中間金などのつなぎ融資実行
- 完成引渡時の最終金融資実行
金融機関と金銭消費貸借契約を締結し、融資実行を受けます。
建築工事請負契約、着工、上棟などの時点で、つなぎ融資を併用しながら、工事出来高に応じて融資を実行して貰います。
その他のスケジュール管理
1年目 02月 測量事務所の手配
- 現況測量の依頼、測量図の作成
建物を建築するためには現況の測量図が必要なので、測量事務所を手配し、測量図を作成します。
1年目 08月 地盤調査
- ボーリング調査の依頼、地盤調査の実施
地盤調査会社に現地のボーリング調査を依頼し、地盤調査を実施します。
08月・09月 既存建物・解体工事
- 既存建物がある場合、建物解体工事の実施
活用対象地に既存建物がある場合は、解体工事の段取りをしますが、建設会社が解体業者を手配することもあります。
また、既存建物が賃貸住宅等で入居者がいる場合は、設計着手段階から立退交渉を進める必要があります。
土地オーナーの仮住まい
1年目 04月 土地オーナーの仮住まい先候補を選定
07月~2年目12月 仮住まい転居復帰
- 仮住まい先の決定、転居
- 仮住まい生活
- 新築建物の完成、復帰
土地オーナーが活用対象地上の建物に居住している場合、仮住まいを探す必要があります。